【扱い注意】非常勤役員の社会保険の加入について ~保険料の遡及徴収に気を付けて~
非常勤役員の社会保険加入手続きが漏れていませんか?
最近、複数の会社(グループ会社)の役員を兼ねている方を多く見ることがあります。
一つの会社で社会保険に加入をしているので、他の会社では社会保険には入っていない方も多いのではないでしょうか。
役員の社会保険加入について
下記にあてはまれば、加入が不要だと考えている方が多いのが現状だと思います。ただし、非常勤役員の方でも実態によっては加入が必要となります。
①報酬が発生していない
②非常勤役員
はじめに、社会保険の適用について
健康保険法3条では、『この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。』と定められており、厚生年金保険法第9条では、『適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。』と定められております。
また、法人の理事、監事、取締役、代表社員等の法人の代表者又は業務執行者は、法人から労働の対象として報酬を受けている場合は、法人に使用されるものとして被保険者となるとされております。(昭和24.7.28保発74号)
「適用事業所に使用され」・「労働の対象として報酬を受けている」ものであれば、社会保険の被保険者として加入が必要となります。
つまり、法人の常勤役員であれば社会保険の加入が必要となります。
それでは、非常勤の役員ではどうでしょうか。
役員の被保険者の取扱いに関して
日本年金機構にて疑義照会(受付番号NO.2010-111)にて、下記掲載がありました。(現在は更新され見れなくっている模様)
「適用事業所において使用され、労務の対象として報酬を受けている役員は常勤、非常勤を問わずにすべて被保険者として扱うのか」と問い合わせで、『労働の対象として報酬を受けている法人の代表者又は役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準に判断されたい」回答されております。
なので、『業務が実態において法人の経営に対する参画を内容する経常的な労務の提供』があれば被保険者として扱うこととなりますね。
ただし、労務の提供がない場合でも報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準にともあるため、報酬が業務の内容の申告と見合っていない金額(あからさまに額が大きい)であれば、疑義が生じ、社会保険の加入が必要になるとも言えます。
また、日本年金機構の別の疑義照会では、「労務の対象として報酬を受けている者」についての判断材料について下記の基準を総合的に判断するとしており、こちらが参考になります。
1.定期的な出勤があるかどうか
2.法人の職以外に多くの職を兼ねていないか
3.役員会等に出席しているかどうか
4.他の役員への連絡調整または労働者に対する指揮監督に従事しているか
5.法人の求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないか
6.役員報酬が労務の内容に相応しており、実費弁償程度の水準にとどまっていないか
まとめ
非常勤役員については、実態によっては社会保険の加入が必要となります。
複数の会社で社会保険に加入することとなった場合については、資格取得届でだけでなく、「2以上勤務者勤務届」を年金機構に届出をしていただき、社会保険の加入手続きを行います。
届出が遅延してしまった場合は、遡及して社会保険の加入をすることになるため、保険料の遡及支払いが必要となりますので注意が必要です。
該当するかについては、役員の労働実態によって総合的に判断することが多く、判断に迷った際は社労士や年金機構に相談していただくことをお勧めします。